お片付けサポートへお伺いすると、「私、以前買い物依存症だったんですよ…。」と、お話して下さる方がいます。今回は、人間関係の整理として「親友との関係を断ち切った話」をしたいと思います。
捨てられなかったスカーフ
お話を聞かせて下さった利用者様(以下、アキコさん)の片付けのご依頼は洋服の整理でした。服を取捨選択する中で、もう何年も使っていないスカーフに目が留まりました。
『これ、親友だった子に私の誕生日にもらったスカーフなんです。もう何年も使っていませんでしたが、もう捨てようと思います。思えば、このスカーフが私が買い物依存になるキッカケだったんですよ。』
当時アキコさんは夫の転勤で、福岡へ引っ越されて来たばかり。友人もいない福岡で、夫の同僚の奥様であるチエさんを紹介されました。福岡に詳しいチエさんでしたが、10年以上子宝に恵まれず…。お互いの夫の仕事は激務で、夫婦関係もよく似たものでした。
東北出身のアキコさんにとっては、福岡の元気ある県民性には、なんだかついて行けず、子供はいるものの、友人知人が出来ずに悩んでいました。
アキコさんとチエさんは、どこか人生の中に欠けたモノを抱えつつ、夫の愚痴という共通のお互いにしか言えない悩みを唯一心を開いて話せる相手でした。
・夫の帰りが遅いこと
・どこかいつも俺様で、上から目線なこと
・仕事だといいつつ、パチンコに行っていること
「もう、あの人たちバカだよね~!」とお互いの愚痴を言いつつ、お洒落なカフェを二人で巡ること。アキコさんのささやかな楽しみでした。
チエさんとの出会いは、流行やファッションに疎かったアキコさんにとっては新鮮で、上手に洋服を着こなし、人当たりもよく、話し上手な彼女に、どんどん魅了されました。
アキコさんの誕生日に、チエさんから贈られたスカーフ。
このスカーフに似合う服を…と、自分も彼女のようになりたいと思い、ファッション誌をみるようになりました。共通の趣味と話題も増え、お互いの心は、より深く通い合いました。
しかし、そんなある日変化が起きたそうです。
長年の不妊治療からの、チエさんの妊娠。
その一報を聞いたとき、「おめでとう!」と手を取り合って涙したそうです。親友であるチエさんが不妊治療で長く頑張っていたこと。そして願いがかなったこと。
こんなに喜ばしいことはないと思っていたのに、ある時、彼女といつものように二人でカフェ巡りをした後…無性に買い物がしたくなるという衝動に駆られるようになったそうです。
理由としては、出産を機にチエさんの対人関係が大きく広がり、自分以外の人間との時間が増えていったこと。
『もう、自分だけの親友ではないのだ…。』
という寂しさから、その心の隙間を埋めるために買い物へと堕ちていったそうです。
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「不幸」で繋がり合った人間関係は、お互いが不幸であり続けねばならないと願う呪縛
アキコさん曰く、
『チエが悪いとか、私が悪いとかそういう話ではなく…。二人の心の繋がりが【不幸】から始まり、【不幸】で繋がり続けていたこと…。これが原因だったのでしょうね。
一緒にいる限り「不幸でいなきゃ、ダメ」と、どこか思う自分が嫌なんです。
結局、チエとは「これ以上一緒に居たら、チエも私も不幸になってまう…。」そう思い、理由は告げず私から離れました。
最初の繋がりがどうであれ、
チエと私が親友だったこと。
これだけは変わらないんです。
けれど、これ以上一緒にいることはお互いの不幸でしかないんです。チエには幸せになって欲しいし、私も幸せでありたい。
そう…思いながらも、このスカーフをまだ手放せずにいましたね…。』
モノには物語がある。手放せない物語を言葉にすること。
『この話は誰にも言えずにいたのですが、
話すことができて、スッキリしました。
もう、このスカーフはサヨナラですね!』
モノには物語があります。あなただけの手放せない物語を語ること。それは、かならず心の棚卸として豊かな時間を与えてくれるものだと思います。
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